「SNS採用という言葉をよく聞くけれど、本当に採用につながるの?」
「InstagramやTikTokを始めれば、応募は増える?」
「中小企業でもSNS採用をする意味はある?」
SNS採用が気になっていても、効果が見えにくく、何から始めればいいかわからない人事・採用担当者も多いのではないでしょうか。
企業の採用情報の届け方も、少しずつ変わってきています。
これまでは、Googleなどの検索エンジンで自社を見つけてもらうためのSEO対策が、Web上の情報発信では重要な施策の一つでした。
そこに近年加わってきたのが、「採用LLMO」や「採用AIO」という考え方です。
採用LLMOは、採用領域における「Large Language Model Optimization」の考え方で、ChatGPTやGeminiなどの生成AIが自社の採用情報を正しく理解し、求職者への回答の中で紹介・引用しやすい状態を整えていく取り組みを指します。
また、AIOは「AI Optimization」の略称として使われる言葉で、生成AIやAI検索に対して情報を最適化していく考え方です。
「採用LLMO」と「採用AIO」は現時点で厳密に統一された定義があるわけではなく、近い意味で使われることも多い言葉です。
では、採用活動ではこれらとSNSをどう考えればよいのでしょうか。
求職者との情報接点を大きく分けると、
自分から企業や求人について情報を探す場面と、
SNSなどを見ている中で、まだ知らなかった企業に出会う場面があります。
自ら情報を探している人に対しては、
検索エンジンで見つけてもらうための採用SEOに加え、
生成AIやAI検索で正しく理解・紹介してもらうための採用LLMO・採用AIO
という視点も、これから意識していきたいところです。
一方、まだ具体的に応募先を探していない人に、
「こんな会社があるんだ」
「こんな仕事があるんだ」
と知ってもらう接点の一つになるのがSNSです。
SNSで何気なく見かけた会社を覚えていて、その後、就職や転職を具体的に考え始めたときに、
「そういえば、前にSNSで見た会社だ」
と思い出すことも考えられます。
つまり、これからの採用情報発信では、
「探している人に見つけてもらう」ための採用SEO・採用LLMO・採用AIOと、
「まだ探していない人にも知ってもらう」ためのSNS
という複数の接点を組み合わせて考えることが重要です。
なお、採用LLMO・採用AIOについては、採用活動における新しい情報発信のテーマとして、今後本コラムでもあらためて詳しく取り上げる予定です。
今回はその中でも、まだ自社を知らない人との接点づくりにも活用できる「SNS採用」に焦点を当てていきます。
本記事では、SNSを使って企業や仕事について情報を発信し、求職者との接点づくりや企業理解につなげる採用活動を「SNS採用」として扱います。
ただし、SNSに求人情報を投稿すれば、すぐに応募が集まるというものではありません。
SNSには、まだ自社を知らない人との接点をつくったり、求人票では伝えにくい仕事や社員の様子を見せたりできる特徴があります。
一方で、SNS採用には「投稿を続けられない」「担当者がいない」「何を発信すればいいかわからない」といった運用上の課題もあります。
この記事では、2026年に公表された最新の関連調査を確認しながら、SNS採用の効果やメリット・デメリット、中小企業がSNS採用を考えるときに知っておきたい基本を整理します。
本記事は、全5回でお届けする「SNS採用」連載の第1回です。
第2回以降では、SNSの選び方、投稿ネタのつくり方、炎上対策、そして最終的に社内でも無理なくSNS運用を続けられる仕組みのつくり方まで、順番に取り上げていきます。
1.SNS採用とは?
SNS採用という言葉から、「InstagramやTikTokに求人情報を投稿すること」をイメージする方もいるかもしれません。
しかし、採用におけるSNSの使い方はそれだけではありません。
求人媒体には、給与、勤務地、休日、勤務時間、応募条件などを整理して伝えやすいという特徴があります。
採用Webサイトなら、事業内容や社員紹介、福利厚生、選考の流れなど、会社についてより詳しく掲載できます。
一方、SNSでは、
社員が働いている様子。
仕事が進んでいく様子。
職場や現場の雰囲気。
社員の声。
会社の日常。
といった情報を、写真や動画などを使って継続的に発信できます。
そのため、採用でSNSを活用する際は、
SNSで会社を知る
↓
投稿を見て興味を持つ
↓
採用Webサイトや求人情報を見る
↓
仕事内容や条件を詳しく確認する
↓
応募を検討する
という流れの一部として考える方法があります。
これは特定の調査で示された唯一の正解ではなく、SNSを採用活動に組み込む際の一つの考え方です。

2. なぜ今、採用でSNSが使われているのか
求職者の情報収集方法は、求人媒体や企業ホームページだけではありません。
株式会社マイナビが2026年2月27日に公開した「2026年1月度 中途採用・転職活動の定点調査」では、中途採用担当者841件に聞いたところ、67.0%が採用活動でSNSや動画プラットフォームを使って情報発信していると回答しました。
また、正社員への調査では、回答数1,349件のうち69.8%が転職活動時にSNSや動画プラットフォームを使って情報収集しているという結果でした。
さらに、企業が今後SNSや動画プラットフォームを使って企業情報や採用情報などを発信することについて、「必要だと思う」は74.8%でした。
出典:株式会社マイナビ「2026年1月度 中途採用・転職活動の定点調査」(2026年2月27日公開)
新卒採用でも、SNSを企業情報を見るために使おうとする学生がいます。
株式会社マイナビが2026年3月31日に公開した「マイナビ 2027年卒 大学生のライフスタイル調査<将来像・就職活動について>」では、就職活動で実名を伴うSNSを「活用したい」とした学生989名に活用方法を聞いたところ、「企業ページを閲覧」が80.0%で最多でした。「企業の最新情報を手に入れる」は44.7%でした。
出典:株式会社マイナビ「マイナビ 2027年卒 大学生のライフスタイル調査<将来像・就職活動について>」(2026年3月31日公開)

ただし、ここには注意したい点があります。
同じ調査では、就職活動で実名を伴うSNSを「活用したくない」が51.7%、「活用したい」が48.3%となり、「活用したくない」が7年ぶりに上回りました。
つまり、
「学生はSNSを使っているから、企業ともSNS上で積極的につながりたい」とまでは言えません。
SNSを企業情報を見る場所として活用したい学生がいる一方、就職活動とプライベートなSNS利用を分けたい学生もいる。
企業側には、この両方を理解した運用が求められます。
3. SNS採用の3つのメリット
では、採用でSNSを使うことで何ができるのでしょうか。
ここからは、SNSの特性を踏まえた活用上のメリットを3つに整理します。
(1)自社を知らない人との接点を増やせる
企業の採用Webサイトは、企業名を検索した人や、すでにその企業に興味を持っている人が訪れることが中心です。
SNSでは、検索だけでなく、フォロー、シェア、おすすめ表示などを通じて投稿が閲覧されることがあります。
そのため、これまで自社を知らなかった人と接点を持つための媒体として活用できます。
実際、ネオキャリア(キャリアトラス)が2026年6月に実施した調査では、SNSで初めて知った企業へ実際にエントリーした人が27.5%いました。
ただし、この結果には重要な条件があります。
対象は、2027年3月卒業予定で内定を保有し、かつ就職活動の情報収集にSNSを活用していた109名です。
したがって、「就活生の27.5%がSNSで知った企業へ応募する」と一般化することはできません。
あくまで、SNSが企業を知るきっかけになったケースが、この調査対象の中で確認されたという結果です。
出典:ネオキャリア(キャリアトラス)調べ「Z世代就活生のSNS活用と情報源信頼度に関する実態調査」
(2)求人票では伝えにくい情報を見せられる
「風通しの良い職場です」
「社員同士の仲が良い会社です」
と文章に書いても、実際の職場がどんな雰囲気なのかまでは伝わりにくいものです。
SNSでは、
社員が仕事をしている姿。
職場や現場。
仕事で使う道具。
製品ができるまでの工程。
などを写真や動画で伝えることができます。

ここでのポイントは、「SNSなら必ず企業理解が深まる」と断定することではありません。
文字だけでは説明しにくい情報を、写真や動画という別の形で提示できる
という媒体上の特徴を活かすことです。
(3)応募前に見てもらえる情報を増やせる
先ほどのネオキャリア調査では、「就職活動で最も信頼できる情報源」として「企業の公式採用ページ」が33.9%で最多でした。
SNSが使われているからといって、採用Webサイトが不要になるわけではありません。
むしろ、
SNSで存在を知る。
SNSで仕事や社員を見る。
公式採用ページで正確な情報を確認する。
というように、それぞれを組み合わせる使い方が考えられます。
4. SNS採用のデメリット・注意点
SNS採用には、運用上の負担があります。
投稿するためには、
企画を考える。
社内からネタを集める。
写真や動画を用意する。
文章を作る。
内容を確認する。
投稿する。
という作業が必要です。
さらに、社員や顧客が写った写真、個人情報、著作物、取引先に関する情報など、投稿してよい内容かどうかも確認しなければなりません。
2026年1月のマイナビ調査では、採用活動でSNSや動画プラットフォームを活用していない278件に理由を聞いたところ、最も多かったのは「情報発信の担当者がいない。用意できない」でした。
つまり、SNS採用は、
「アカウントを作れるか」より「誰が続けるのか」
が一つの課題になります。
また、SNSには炎上リスクもあります。
だからこそ、投稿担当者だけに判断を任せるのではなく、社内での確認方法や運用ルールも必要です。
この部分は、連載第4回で詳しく取り上げます。
5. 中小企業がSNS採用を考える意味
中小企業の採用では、
「うちにはSNSで発信できるものがない」
と考えてしまうことがあります。
しかし、投稿するものは華やかなイベントだけではありません。
たとえば、
製造業なら、機械や製造工程。
建設業なら、工事が進んでいく様子や仕事道具。
運送業なら、ドライバーの一日や車両。
介護業なら、施設や職員の仕事。
こうした内容も投稿テーマとして考えられます。

これは特定の調査から「効果がある」と証明された例ではなく、各業種で発信素材を探す際の具体例です。
大切なのは、
「他社で流行っている投稿は何か」
だけを見るのではなく、
「自社の仕事の中に、求職者がまだ知らないものはないか」
という視点で探すことです。
6. SNS採用は「応募数」だけで効果を判断しない
SNS採用を始めると、
「この投稿から何件応募が来た?」
という数字が気になります。
もちろん、応募数は大切です。
ただし、SNSの役割を応募だけに限定すると、途中の動きが見えにくくなります。
たとえば、
投稿を見てもらう。
プロフィールを確認してもらう。
採用Webサイトへ移動してもらう。
企業名を検索してもらう。
そして応募する。
という流れがあります。
これは今回紹介した調査から「すべての求職者がこの順番で動く」と確認されたものではありません。
あくまで、SNSを採用導線の一部として設計する場合の考え方です。
再生数やフォロワー数だけを見るのでもなく、応募数だけを見るのでもない。
SNSからその先の採用活動へ、どうつながっているのかを見ることが重要です。
7. SNS採用は、始めるより「続ける」方が難しい
SNSアカウントの開設自体は、一度行えば終わります。
一方、運用は続きます。
会社紹介を投稿した。
社員紹介を投稿した。
福利厚生を紹介した。
そして、
「次は何を投稿しよう?」
となってしまう。
SNS採用を長く続けるなら、この状態を避ける仕組みが必要です。
そのためには、
自社では何を発信するのか。
社内のどこからネタを見つけるのか。
社員紹介や仕事紹介など、繰り返し使える投稿の型をつくれるか。
誰が制作するのか。
誰が確認するのか。
といったことを少しずつ決めていきます。

そして最終的には、
一人の担当者しか運用方法を知らない状態ではなく、社内でも無理なく継続できる状態をつくる。
これもSNS採用を設計するときの一つの考え方です。
この「続けられる仕組み」については、第2回以降で少しずつ具体化し、第5回で詳しく取り上げます。
8. SNSだけで採用を完結させなくていい
SNSにはSNSの役割があります。
採用Webサイトには採用Webサイトの役割があります。
求人媒体にも、条件を整理して比較しやすいという役割があります。
そのため、
SNS=会社を知る・興味を持つ
採用Webサイト=会社を詳しく確認する
求人媒体=仕事内容や条件を確認する
という役割分担で考える方法があります。
2026年のネオキャリア調査でも、SNSを就職活動の情報収集に利用していた調査対象者の中で、最も信頼できる情報源として「企業の公式採用ページ」が最多となりました。
SNSだけですべてを伝えようとするのではなく、
SNSを見て興味を持った人が、正確で詳しい情報へ進める状態をつくる。
採用活動全体を見ると、この視点も大切です。
まとめ
SNS採用は、SNSに求人情報を投稿するだけのものではありません。
会社を知ってもらう。
仕事内容や社員を見てもらう。
興味を持った人に、採用Webサイトや求人情報でさらに詳しく確認してもらう。
SNSを、こうした採用活動の接点の一つとして使うことができます。
2026年に公表されたマイナビの調査では、中途採用担当者の67.0%がSNSや動画プラットフォームで採用に関する情報発信をしており、転職活動時にSNS等で情報収集する正社員も69.8%いました。
一方、新卒学生の調査では、実名を伴うSNSを就職活動で「活用したくない」という学生も51.7%います。
つまり、
「SNSをやれば採用できる」
「若者採用ならSNSが必須」
と単純に言い切れるデータではありません。
自社の採用ターゲットにとってSNSがどんな役割を持つのかを考え、採用Webサイトや求人媒体と組み合わせながら使うことが重要です。
そして、SNS採用を始めるなら、始められるかではなく、続けられるか。
どんなネタを発信するのか。
どんなフォーマットを使うのか。
どんなルールで運用するのか。
将来的に社内でも続けられるのか。
ここまで考えておくことで、SNSを一時的な施策で終わらせにくくなります。
次回予告|第2回「Instagram?TikTok?失敗しない採用SNSの始め方」
第2回では、
「InstagramとTikTokならどちらを選べばいい?」
「若い人を採りたいならTikTokでいい?」
「そもそもSNSを選ぶ前に何を決めればいい?」
という疑問を整理します。
SNSごとの特徴だけを比較するのではなく、
誰を採用したいのか。
何を伝えたいのか。
どんな投稿なら続けられるのか。
という順番から、自社に合った採用SNSの始め方を考えていきます。
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