求人原稿の作成から応募者への連絡、面接準備まで。
採用担当者の仕事は幅広く、ほかの業務と兼任している企業では、日々の対応に追われがちです。
「生成AIを採用業務に使ってみたいけれど、何から始めればよいかわからない」
そんな方もいるのではないでしょうか。
2026年10月28日には、厚生労働省の中小企業リスキリング支援事業で、生成AIを使った求人票の作成などを実演するオンラインセミナーが開催されました。
https://reskilling.mhlw.go.jp/event/ai1028/
採用の現場でも、AIをどう使うかが身近なテーマになっています。
採用業務で生成AIが役立つのは、文章の下書きやアイデア出し、情報の整理などです。
しかし、生成AIを活用する目的は、単に作業を減らすことではありません。
効率化によって生まれた時間を、社員への取材や応募者との対話など、人にしかできない仕事に使うことも大切です。
この記事では、採用業務での生成AIの活用方法、主要ツールの選び方、今日から試せるプロンプトと社内での始め方を紹介します。
1. 採用業務で生成AIにできること、できないこと
生成AIは、質問や指示を受けて文章などを作り出す技術です。
ChatGPTのような対話型サービスなら、専門的な操作を覚えなくても普段の言葉で依頼できます。
採用担当者にとって使いやすいのは「最初の案を作る」「考えを整理する」という2つの役割です。
ゼロから文面を考える代わりにたたき台を作ってもらい、違和感のある箇所を直していく。
複数の案を出してもらい、比較しながら方針を考える。
こうした使い方なら、いつもの業務に組み込みやすいでしょう。
ただし、AIは自社の現場を見たわけではありません。
「働きやすい職場です」と書かれていても、その根拠がなければ求人原稿には使えません。
できあがった文章の事実確認と最終判断は、人が担当します。
2. 採用担当者が試したい5つの活用場面
① 求人原稿の下書き・改善
公開可能な仕事内容や応募条件を伝えて、求人原稿のたたき台を作ります。
「高校生向けに専門用語を言い換えて」「大学生に対して仕事内容が伝わりやすい順に並べ替えて(その理由も教えて)」といった修正にも使えます。
注意したいのは、存在しない待遇や研修制度をAIが補ってしまう可能性です。
給与、休日、業務内容は必ず正式な資料と照合します。
第2回では、求人原稿を作り、現場の情報を加えて改善する手順を詳しく紹介します。

② 採用広報・SNS投稿の企画
「新卒採用向けに、社員紹介以外の投稿テーマを考えて」と指示すれば、企画の候補を洗い出せます。
仕事の一日、入社後の教育、道具の使い方など、求職者が知りたい情報を探すきっかけになります。
ただし、AIの提案に自社ならではの特徴が含まれているとは限りません。
社員への取材や写真の確認を通じて、実際の姿が伝わる企画に仕上げます。
③ 応募者へのメール作成
応募受付、面接日程の案内、持ち物の連絡など、定型的なメールの下書きに利用できます。
「堅すぎない丁寧な表現にして」と調整を頼むのも一つの方法です。
送る前には、日時や場所だけでなく、相手が不安なく読める文章かを確かめましょう。
第3回では、AIの文章をそのまま送らず、応募者への配慮を加える具体例を扱います。
④ 面接質問の準備
募集職種と確認したい能力を伝え、面接質問の候補を出してもらえます。
「質問の狙いも添えて」と頼めば、面接官同士で確認したい項目をそろえる際の参考になります。
質問が職務と関係しているか、不適切な内容がないかは人が確認します。
面接では用意した質問を読むだけでなく、応募者の話を聞いて理解を深めることが大切です。
⑤ 採用データの整理・振り返り
応募数、面接数、辞退数などを集計したデータから、増減や気になる段階を整理する使い方もあります。
分析の切り口を考える際にも役立ちます。
ただし「面接辞退が増えた原因は日程調整にある」とAIが述べても、それは確定した事実ではありません。
募集時期や選考フローなども確認して判断します。
第4回では架空の数値を使い、分析の流れを実演します。
3. ChatGPT・Gemini・Copilot・Claude、どれを選ぶ?
どれも文章作成や情報整理に利用できますが、普段の仕事で使うサービスによって便利な場面が変わります。

まず、会社で業務利用が認められているかを確認します。
次に、日常的に使うサービスとの相性を見ます。
Google Workspaceが中心ならGemini、Microsoft 365が中心ならCopilotの連携機能が候補になります。
チャットで文章を考えるところから始めたいなら、ChatGPTやClaudeも選択肢です。
ただし、同じ名称でも無料版・有料版や契約によって利用できる機能が異なります。
業務データの入力可否を含め、社内の契約・設定を確認してください。
初めから4種類を使い比べる必要はありません。
4.最初の一歩は「小さな業務」から
生成AIの導入というと大がかりに感じるかもしれませんが、まず一つの作業で試す方法があります。
STEP 1:安全に試せる仕事を選ぶ
最初は公開済みの求人情報の言い換えや、架空の条件での説明会企画などがおすすめです。
応募者の氏名や社外秘の資料を入力しなくても、生成AIの使い方を確認できます。
STEP 2:目的・対象・条件を伝える
単に「採用の企画を考えて」と頼むより、誰に何を伝えるかを具体的にすると回答を検討しやすくなります。
STEP 3:出力を直して、使える形にする
最初の回答を完成品と思わず、不足している情報や曖昧な表現を指摘します。
最終的には社内の事実に照らして修正します。
うまくいった指示文と修正点を残せば、次の業務でも参考になります。
5.実践:会社説明会の企画をAIと壁打ちする
架空の製造業で、高校生向けの会社説明会を考える場面を例にします。
ここで示す回答は説明用の想定であり、特定のツールで実行した結果ではありません。
最初のプロンプト
あなたは中小企業の採用担当者を支援するアドバイザーです。製造業の会社説明会で、高校生に伝えるべき内容を5つ挙げてください。各項目について、なぜ必要かも説明してください。専門用語は使わないでください。
AIは仕事内容や研修、働く環境などを提案するかもしれません。
しかし「研修制度が充実している」といった言葉だけでは、実際に何を学べるか伝わりません。
そこで、次のように追加で質問します。
追加のプロンプト
「研修制度が充実している」では抽象的です。高校生が入社後の生活を想像できるよう、現場社員に確認する質問を5つ考えてください。答えを推測で作らないでください。
例えば、最初に教わる仕事、誰が教えるか、一人で任されるまでの流れなど、確認したい内容が整理できます。
次は採用担当者の出番です。
現場で働く社員に話を聞き、確認できた内容を説明会に反映します。
「未経験でも安心」という言葉より、実際の教え方を紹介したほうが、求職者は働く姿を想像しやすくなります。
AIは考えるための相手にはなりますが、会社の事実を見つけるのは人の仕事です。

6.社内で使い続けるために確認したいこと
生成AIを採用業務に取り入れる際は、複雑なルールを最初から作るより、まず次の3点を確認しましょう。
- 何を入力してよいか: 会社で許可されたサービスを使い、個人情報や未公開情報を安易に入力しない。
- 誰が確認するか: 求人条件や応募者向けメールなど、社外へ出す内容の確認担当を明確にする。
- 何を共有するか: 役立ったプロンプトだけでなく、AIが誤った箇所や人が修正した理由も残す。
特に採用担当者は履歴書や選考情報を扱います。
情報入力の注意点は公開済みの記事で詳しく紹介しています。
7.よくある質問
Q.生成AIが初めてでも採用業務に使えますか?
はい。公開済みの文章の言い換えや、架空の情報での企画案作成などから始められます。まず一つの仕事で試し、人による確認を挟みましょう。
Q.ChatGPTとGeminiはどちらが採用向きですか?
どちらも文章作成や情報整理を支援できます。
会社の利用ルールと日頃の業務環境を基準に選ぶのが現実的です。
特定のツールだけが採用に適しているわけではありません。
Q.AIが作った文章をそのまま公開・送信してもよいですか?
おすすめしません。
事実に誤りがないか、相手に必要な情報があるか、実際の会社に合った表現かを確認してください。
AIの回答が自然な文章でも、内容が正しいとは限りません。
まとめ|採用は、人と人が向き合う仕事
生成AIは、採用業務の下書きや情報整理、アイデア出しを助けてくれます。
しかし、便利だからといって、AIの答えをそのまま使うことが目的ではありません。
私たちJITSUGYOの社内でも、AIが書いた文章をそのまま相手に送ってよいのか、という話が出ます。
例えば、応募者のエントリーシートも、きれいに整った文章より、その人自身の考えが伝わる文章のほうが印象に残るものです。
私たちが文章を送る際も同じで、相手への配慮や自分の考えがなければ、どれだけ文章が整っていても思いは十分に伝わりません。
採用は、人と人が向き合う仕事。AIで生まれた時間を、社員への取材や応募者との対話に使う。
そんな活用を、身近な業務から始めてみてはいかがでしょうか。
次回は、生成AIで求人原稿を作成し、自社らしい文章に仕上げる方法を取り上げます。
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