「採用SNSを始めたい。でも、炎上したらどうしよう」
「社員にSNSを任せて、本当に大丈夫?」
「少し面白い投稿もしたいけれど、会社としてどこまでやっていい?」
SNS運用を検討する企業にとって、「炎上」への不安は無視できない問題です。
投稿内容を間違えれば、批判的なコメントが集まることがあります。さらに、個人情報や社内情報を公開してしまえば、企業の信用にも関わります。
だからといって、炎上が怖いから、当たり障りのない投稿だけにする。これだけが答えではありません。
SNSでは、少し意外性のある企画や、コメントしたくなる投稿の方が反応を集めることもあります。
当社のSNS運用でも、通常の採用情報とは少し違うネタ系の投稿で、普段より再生数が伸びたケースがあります。
大切なのは、「絶対に炎上しない投稿」を探すことよりも、
何を投稿すればよいのか。
どこまでの表現なら会社としてOKなのか。
指摘が来たらどう対応するのか。
をあらかじめ決めておくことです。
そこで今回は、採用SNSを運用する企業が事前に決めておきたい6つのルールを軸に、実際のSNS運用で起きた事例や、従業員個人のSNS利用についても考えていきます。
本記事は、全5回でお届けする「SNS採用」連載の第4回です。
第3回では、自社の中から投稿ネタを探し、会社に合ったフォーマットをつくることで、採用SNSを続けやすくする方法をご紹介しました。
今回は、その発信を安心して続けるための「守り方」を整理していきます。
1.その投稿、本当に大丈夫?採用SNSにある炎上リスク
SNSで投稿すると、その情報は企業の管理下だけにとどまりません。
投稿を見た人がコメントする。
スクリーンショットを撮る。
別のSNSへ転載する。
投稿について意見を書く。
こうした動きが起こる可能性があります。
そのため、投稿後に、
「この写真、出してよかったのかな」
「取引先の名前が写っている」
「コメントで内容を間違っていると指摘された」
となってから対応を考えるのでは遅い場合があります。
株式会社帝国データバンクが2026年5月に行った「SNS投稿に関する社内ルールの整備状況アンケート」では、従業員個人のSNS投稿について、企業の社会的信用を損なうおそれのある発信を制限する社内ルールが「ある」と回答した企業は23.2%でした。
一方、「ルールはないが、検討中」36.8%、「ルールを設ける予定はない」32.0%となっています。
出典:株式会社帝国データバンク「SNS投稿に関する社内ルールの整備状況アンケート」(2026年5月15日公開)
炎上対策というと、「投稿してはいけないものを決める」ことをイメージしがちです。
もちろん、それも必要です。
ただし実際の運用では、
「これは投稿していい?」
「このコメントには返信する?」
「間違いを指摘されたら消す?」
といった、白黒をつけにくい場面も出てきます。
そこで必要になるのが、会社としての判断基準です。
2. 企業が炎上前に決めておきたい6つのルール
では、採用SNSを始める前に何を決めておけばよいのでしょうか。
ここでは、実際の運用で迷いやすいポイントを6つのルールに整理します。
なお、この6項目は法令や公的機関が定めた必須項目ではありません。SNS運用を社内で整理するために、本記事で提案する項目です。
ルール1|投稿してはいけない情報を決める
まず決めたいのが、「出してはいけない情報」です。
たとえば、
社内の機密情報
顧客や取引先の情報
公開前の商品やサービス
個人情報
社内資料
などです。
特に写真や動画では、投稿者が意図していない情報が背景に写り込むこともあります。
ホワイトボード
パソコン画面
名札
資料
社員しか気づかない情報でも、SNSでは外部の人が見ることになります。
投稿内容だけでなく、背景まで確認するという意識も必要です。

ルール2|会社としてのトンマナを決める
次に、「どこまでカジュアルな発信をする会社なのか」を決めます。
採用情報や仕事紹介を中心に、比較的かための発信をする。
社員の日常も見せる。
仕事あるあるを投稿する。
クイズを入れる。
ネタ系企画にも挑戦する。
会社によって答えは違います。
当社でも、通常投稿の中にネタ系の企画を挟むことを提案する場合があります。
一方で、「会社としてネタ系はやらない」という企業もあります。
重要なのは、どちらが正しいかではありません。
会社として“ここまでならOK”という範囲を共有することです。
ルール3|社員や人物を掲載するときの確認方法を決める
社員紹介や仕事風景を投稿する場合、人が写ることがあります。
そのとき、
誰なら掲載してよいのか。
掲載前に本人へどう確認するのか。
顔出しが難しい社員はどうするのか。
を決めておきます。
「社員だから掲載しても大丈夫だろう」と担当者だけで判断しないことが重要です。
顔を出さなくても、
後ろ姿
手元
イラスト
アニメーション
など、人物や仕事内容を伝える方法はあります。
ルール4|投稿前に誰が確認するかを決める
投稿担当者が「企画・制作・チェック・投稿」のすべてを一人で行っていると、本人が気づかなかった間違いをそのまま公開してしまう可能性があります。
そこで、
誰が内容を確認するのか。
どこまでの投稿なら担当者判断でよいのか。
どんな内容は責任者確認が必要なのか。
を決めます。
すべてを何人もの承認制にすると、逆に投稿が止まってしまう場合もあります。
そのため、リスクと運用負担のバランスを考えて確認フローをつくることが大切です。
ルール5|間違いや指摘への対応を決める
SNSでは、投稿後に内容の誤りを指摘されることがあります。
そのとき、
修正する。
コメントで訂正する。
投稿し直す。
削除する。
対応しない。
など、いくつかの選択肢があります。
何でも削除すればよいわけではありません。
逆に、明らかな誤りを放置すれば、さらに指摘が増える可能性もあります。
まず内容を確認し、事実に誤りがあるのか、単なる意見の違いなのかを分けて考える必要があります。
ルール6|問題が起きたときの報告先を決める
最後に、「どこから担当者だけで判断しないか」を決めておきます。
たとえば、
個人情報が出てしまった。
顧客や取引先から指摘が入った。
批判コメントが急増した。
外部メディアから問い合わせが来た。
といった場合です。
問題が大きくなってから、「誰に相談すればいい?」と考えるのではなく、
採用担当
広報
上司
経営者
必要に応じて専門家
など、報告ルートをあらかじめ決めておきます。

3. SNS炎上は「ゼロにする」だけで考えない
ここまで6つのルールを紹介しました。
ただし、SNS運用の目的を、「とにかく何も問題を起こさないこと」だけにしてしまうと、発信内容が必要以上に固くなることもあります。
そもそも「SNS炎上」という言葉には、今回確認した範囲では公的な統一定義はありません。
本記事では便宜上、SNS上で投稿に対する批判や指摘が集まり、それが通常より広く拡散する状態を炎上として扱っています。
ここで区別したいのが、「批判的なコメントが来ること」と、「企業として問題のある投稿をしてしまうこと」です。
SNSに投稿すれば、反対意見や細かな指摘が来る可能性はあります。
一方、
個人情報を漏らす。
事実と異なる情報を発信する。
顧客を傷つける。
差別的・侮辱的な表現をする。
といった問題は、単に「反応が多かった投稿」と同じようには考えられません。
反応が集まることと、企業として許容できないことを分ける。
ここがSNS運用では重要です。
4. 実際にあった、機械名クイズへの指摘コメント
ここで、当社がSNS運用を支援する中で実際に経験した事例をご紹介します。
ある企業のSNSで、「この機械の名前、知っていますか?」というクイズ形式の動画を投稿しました。
動画内では最後に機械の名称を正解として紹介しましたが、投稿後、
「その呼び方は正確ではない」
「正式には○○では?」
といった趣旨のコメントが寄せられました。

コメントが入ったあと、その投稿への反応は増え、通常の投稿より再生数も伸びました。
ただし、ここは慎重に考える必要があります。
「指摘コメントが入ったから再生数が伸びた」と因果関係まで断定することはできません。
SNSの再生数には複数の要因が関わるためです。
当社で確認できたのは、
指摘コメントが寄せられ、投稿への反応が増えたタイミングで、通常より再生数も伸びた
という事実です。
この事例から考えたいのは、「指摘された=すぐ投稿失敗」ではないということです。
専門的な仕事を紹介していれば、業界経験者から呼び方や内容について指摘されることもあります。
まず確認する。
本当に誤りなら訂正する。
呼び方が複数あるなら説明する。
必要な対応をしたうえで、必要以上に慌てないことも大切です。
5. 「ネタ系投稿」はどこまでOK?
採用SNSでは、
仕事紹介
社員紹介
福利厚生
募集情報
など、企業を理解してもらうための投稿が基本になります。
その中で、少し軽い企画を入れる方法もあります。
当社では、企業の方針に合う場合、通常の採用投稿だけでなく、社員の人柄や仕事への興味につながるネタ系投稿を適度に挟むことを提案しています。
実際の運用でも、通常の会社紹介や採用情報より、こうした投稿の再生数が伸びたケースがあります。
ただし、「ネタ系投稿は採用SNSで必ず伸びる」と一般化できる信頼性の高いデータは、今回確認できていません。
また、再生数が伸びるからといって、すべての企業がネタ系投稿をする必要もありません。
ある会社では、「少し面白い投稿もやりたい」という方針。
別の会社では、「企業としての信頼感や専門性を優先したい」という方針。
どちらもあり得ます。
だからこそ、先ほどのルール2「会社としてのトンマナを決める」が重要なのです。
6. 批判コメントが来たら、すぐ削除するべき?
SNSに批判的なコメントが来ると、
「消した方がいい?」
「投稿自体を削除した方がいい?」
と不安になります。
しかし、コメントの内容によって対応は変わります。
事実についての指摘
まず事実確認をします。
企業側に誤りがあれば、訂正や修正を検討します。
商品や会社への意見
一つの意見として確認します。
返信するのか、静観するのかを会社として判断します。
個人情報・機密情報についての指摘
これは単なる批判コメントとは性質が違います。
投稿自体に問題がないか、速やかに確認します。
誹謗中傷・脅迫的なコメント
通常の批判と区別し、社内責任者への共有や、必要に応じてSNSプラットフォームへの通報などを検討します。
重要なのは、コメントが来てから対応方法を考えないこと。
先ほどの6つのルールの中で、ある程度の判断基準を用意しておきます。
また、当社では、
少し批判的な反応が出た時点で、すべて「失敗」と判断する必要はない
と考えています。
投稿への議論が活発になる中で、再生数が伸びた経験もあるためです。
ただし、炎上を意図的に起こすことを推奨しているわけではありません。
企業や社員への信用を傷つけたり、個人情報や機密情報を漏らしたりしてまで再生数を取る意味はありません。
再生数だけではなく、会社として許容できる発信なのかを見ることが重要です。
7.公式SNSだけではない、従業員の個人SNSリスク
ここまで企業の公式SNSについて考えてきました。
しかし、企業のSNSリスクは公式アカウントだけではありません。
従業員の個人SNSから、社内情報が外部へ出る可能性もあります。

2026年4月、日本テレビの「ZIP!」の新人スタッフによるSNS上での内部情報漏洩について、日本テレビが定例会見で説明しています。
2026年4月27日に公開された会見要旨によると、同局は事案を「大変重く受け止めている」とし、当該スタッフを含む新人スタッフに対して、4月1日にSNS情報漏洩の禁止や入構証の管理などを含む研修を行っていたと説明しています。
それでも事案が発生したことについて、日本テレビは対応が十分ではなかったとし、全社的な情報管理の徹底や、外部協力会社を含む管理体制の再点検を進めるとしています。
出典:日本テレビ放送網株式会社「2026年4月27日 日本テレビ定例会見《要旨》」
この事例から考えたいのは、「一度研修すれば大丈夫」とは限らないということです。
社外秘とは何か。
会社の中を撮影すると、どんな情報が写る可能性があるのか。
限定公開でも保存・転載される可能性があること。
こうした具体例を含め、繰り返し共有していく必要があります。
8.SNSルールは「作って終わり」にしない
ルールを一度資料にまとめても、それだけで問題を防げるわけではありません。
帝国データバンクの2026年5月調査では、従業員個人のSNS投稿について「ルールがある」と回答した企業は23.2%。
企業規模別では、大企業の50.5%に対し、小規模企業では9.8%でした。
特に中小企業では、SNS専任担当者を置くことが難しい場合もあります。
だからこそ、
投稿フォーマット
ネタの探し方
投稿してはいけない情報
会社としてのトンマナ
投稿前の確認方法
コメント対応
問題発生時の報告先
まで、日々の運用で使える形にしておくことが重要です。
当社がSNS運用を支援する際も、単に投稿を制作するだけではなく、その会社に合ったフォーマットやネタの探し方とあわせて、SNS運用上のルールを共有することを重視しています。
そして、実際に運用すると、
「この投稿は問題なかった」
「このケースでは事前確認が必要だった」
「この表現は会社として避けたい」
といった具体例が蓄積されます。
その経験をルールへ反映する。
必要に応じて更新する。
そして最終的にはマニュアルとして会社の中に残す。
SNSルールは、発信を止めるために作るものではありません。
迷わず、安全に発信を続けるために作るものです。

まとめ
SNS炎上を完全にゼロにする方法はありません。
また、批判的なコメントが一つ付いたからといって、すべてを「炎上」と考える必要もありません。
重要なのは、問題が起きてから慌てるのではなく、
①投稿してはいけない情報
②会社としてのトンマナ
③人物掲載の確認方法
④投稿前のチェック担当
⑤間違いや指摘への対応
⑥問題発生時の報告先
という6つのルールを事前に整理しておくことです。
そして、企業によってSNSとの付き合い方は違います。
仕事紹介や採用情報だけを発信したい会社。
社員の日常も見せたい会社。
クイズやネタ系企画にも挑戦したい会社。
どれが正解というわけではありません。
当社の運用経験でも、少し意外性のある投稿で通常より再生数が伸びたケースがあります。
一方で、「再生数が伸びるなら何を投稿してもいい」ということでもありません。
どこまでなら自社らしいのか。
どこからは企業として避けるのか。
その線引きを、担当者個人ではなく会社として決めておくことが重要です。
さらに、SNSリスクは公式アカウントだけではありません。
従業員個人のSNS利用についても、機密情報や個人情報などの考え方を共有する必要があります。
ルールをつくる。
実際に運用する。
判断に迷った事例を蓄積する。
ルールを見直す。
マニュアルとして残す。
ここまでできれば、SNS運用は少しずつ「担当者の感覚」から「会社の仕組み」へ変わっていきます。
次回予告|第5回「採用SNS、担当者の頑張りだけで続けていませんか?更新が止まらない運用の仕組み」
最終回では、ここまでの4回をつなげて、採用SNSをどうすれば無理なく続けられるのかを考えます。
誰に発信するかを決める。
会社に合った投稿フォーマットをつくる。
社内からネタを探す。
SNSルールを共有する。
実際の運用を通して改善する。
そして、運用方法をマニュアルとして蓄積する。
すべてを最初から自社で行う必要も、ずっと外部へ任せ続ける必要もありません。
最初はプロと一緒に運用の型をつくり、最終的には社内でも無理なく続けられる状態を目指す。
連載の最終回では、SNS運用代行と内製化をどう組み合わせるのかを整理します。
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